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形容詞の後置修飾 - Postpositive Adjectives

前置修飾と後置修飾の違い

名詞を前から修飾する前置修飾と後ろから修飾する後置修飾には、ニュアンスの違いがあります。

名詞を前から修飾する時は、冠詞同様、名詞を絞り込み、限定する意味を持つことがあります。一方、後ろから修飾する場合、その名詞の補足説明・一時的な傾向になり、名詞の範囲を限定する作用は持ちません。

  1. I like hot coffee.「ホットコーヒー」
  2. I like coffee hot. 「コーヒーは温かいのを」

例文1は「飲み物は何が欲しい?」とか「何が好き?」と聞かれて普段の自分の好みを答える時に使います。"hot coffee" は、既に2語で1語の感のある「ホットコーヒー」という名称です。

2番目の例文は、「コーヒーを温めるか冷めたままか?」という選択に対して答える時に使います。"hot coffee" と違い、coffee と hot は一つの認識ではなく、"coffee is hot" という感覚で、coffee の状態を説明しています。

こんな風に、coffee を前から修飾するか、後ろから修飾するかで意味合いが違ってきます。ただし、後置修飾になりやすい形容詞は、available, responsible, imaginable, vulnerable 等、一定の単語に限られています。

英語の場合、やっかいなのは、前から修飾する場合、限定用法だからといって必ずしも名詞を限定するものではない点です。例を見てみましょう。

She always avoid a difficult task.
彼女が避けるのは tasks の中でも difficult なものと限定的。
She has a difficult task of balancing work and family matters.
仕事と家庭の両立の taskは「難しい」と task を修飾しているもの。

そのため、前置修飾と後置修飾の違いは、意味上全く変わらないこともあります。

Do you have a room available?
Do you have an available room?

available は、名詞の後ろにつくことの多い形容詞ですが、前置修飾にも用いられます。2つの文に大きな意味の違いはありません。意識が "a room (which is) available" となっているか、"an available room" となっているかの違いです。

一方で、前置修飾と後置修飾かによって意味が異なる場合もあります。

I have a room ready for our guests.
They have ready access to police files.

ready は、限定用法と叙述用法で意味が異なる形容詞の一つ形容詞の叙述用法参照)

「準備された状態」という意味が元々ですが、そこから転じて、名詞の前に来ると「即座の」という意味になります。

一方、後置修飾場合、"a room" を持っている、その部屋は "ready for our guests" だと、a room を説明しています。

名詞を常に前から修飾する日本語では、英語の前置修飾と後置修飾のニュアンスの違いを把握するのは少々難しいですが、この感覚が見えてくると、英語の世界観が理解できるようになってきます。

今度は形容詞ではありませんが、前置詞句や、形容詞節で名詞を後ろから修飾している例を見てみましょう。3通りの「色黒の女の子」という言い方です。

  1. The dark-skinned girl is Mary.
  2. The girl with dark skin is Mary.
  3. The girl who has dark skin is Mary.

意味に違いはありませんが、最初の文は、「浅黒い肌の女の子」という認識。
それに対し、2番目、3番目は、永続的・恒久的性質や特質を表しつつも、「その女の子」という認識がまずあり、それに「浅黒い肌の」という意識がつづいています。

英語の形容詞は名詞の前に来るのが一般的ですが、その場合形容詞は、冠詞と同様、名詞を限定・分類する助けをしているのです。その結果、名詞の、永続的・恒久的性質や特質を現す場合が多くなります。

一方、後置修飾は、前置詞や形容詞節を使った名詞の修飾を含め、まず名詞の認識→その名詞の状態・状況の説明という意識の流れがあります。ですから、名詞の一時的な性質なのです。

ただし、"the president elect" "Attorney general" "a court martial" "the devil incarnate"
のように「名詞+形容詞」のフランス語直輸入の言い方が定着した複合語の名詞的な言葉もあります。

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